今回の投票結果には、欧州統合そのものに対する批判よりも、国内政治に対する国民の強い不満が表れていると解されており(詳しくは こちら@、A、B、C、D)、Raffarin 首相の辞任が予測されている。なお、Chirac 大統領は継投するものと見られているが(詳しくは こちら)、2年後の大統領選挙に向け、フランス国内政治は大きく動き出すと解される(詳しくは こちら)。
憲法条約への支持を訴えてきた Chirac 大統領と Barnier 外相は、開票の早い段階で、批准が否決されたことを認めるとともに、EU内における自国の地位の低下を指摘している。EC(EU)の現加盟国として、過去50年以上にわたり欧州統合を推進してきたフランスの求心力が弱まることは必須であるが、他方、これから始まるであろう「新しいヨーロッパ」の時代の扉を開いたのはフランスであり、同国の指導力は揺がないとみることもできる(詳しくは
こちら)。しかし、一時的に、欧州統合が停滞することは否定できず、特に、さらなる市場統合に対するEU市民の不安(社会・労働水準の低下に関する懸念)をいかに取り除くかが重要課題になると解される(詳しくは
こちら)。
欧州憲法条約の発効には、全てのEU加盟国の批准が必要であるため、2006年11月の発効という当初の目標が達成されない可能性が強まっているが、欧州委員会の
Barroso 委員長 は、批准手続に変更はないとしている。なお、オランダでは、3日後の6月1日に国民投票が実施されるが、同国でも反対派が過半数に達しており、フランスの結果は大きな影響を及ぼすものと解される(参照)。
フランスは、2006年秋(つまり、すべての加盟国が批准を決定した後)秋に、再度、国民投票を実施することも検討されているとされるが(参照)、Barnier 外相は、@ 国民投票の投票率が高かったこと、また、A 批准反対派が賛成派より約10%も多かったことを考慮し、憲法条約の修正なしに再度、国民投票を実施する意義を否定している。
欧州憲法条約は、EUの統治機構や立法手続を改正し(スペインとポーランドの持票数の削減、こちら も参照)、拡大し続けるEUの意思決定手続を実効的にする一方、常任の EU大統領 や外相 を新たに任命し、対外的側面の強化を狙っている(EUの政治・外交力の強化)。フランス国民は、この点に反対していわけではないと解されないが、国民投票の結果を受け、EU改革は休止を余儀なくされるものとみられる。
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